響の物語
「よくも まぁ… そんな状態でよく生きてきたね。」
「生きているのが奇跡のようだね。」
私が聞いたのは、響の凄まじい過去と悲惨な生活環境だった。
父はきっと響が産まれる前から妻に対してDVを繰り返してきただろう。
トラックの運転手だった父は家も空けがちだったらしい。
母親は弟が生まれ1年後に夫と子どもたちを捨て失踪。
響が3歳の時だった。母親の顔も覚えてないという。
未だに行方はわからない。
妻に逃げられたのち、父は自分に子どもは育てられない。と
兄弟はカトリック系の乳児園に入る事となる。
3歳から6歳までの3年間は
シスター達に愛されスクスク育っていた。
幼稚園にも行かせてもらった。
シスターは怒らない。
幼稚園か嫌で隠れていても
かくれんぼの様に探して「みーつけた。どうしたの?」と声をかけてくれる。
「行きたくない」と言うと「そう。」と抱きしめてくれる。
この時が人生で1番幸せだったんだと…あとから思った。
小学校に入るということで、何度かの面会の後、家に帰る事になった。
子どもたちは、父と母と生活出来ることに喜んでいた。
(父は再婚していた。当時は義母を実母だと思っていた)
そんな気持ちも直ぐに幻だとわかった。
家には父のDVが日常にあり、
幼い我が子たちにも暴力を振るうようになる。
暴力が日常であり、常に命の危険に晒される日々を送る子ども達。
あまりにも過酷な体験のために、心や身体に大きな傷を背負い生きてきた。
そんな子どもたちを「生存者・サバイバー」と呼ぶ。
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